「利用者の意思尊重」と「リスク管理」をどう考えるか
2025/12/20
〜私たちが大切にしている支援のバランス〜
福祉の現場ではよく、「安全を守ること」と「本人の自由を尊重すること」は、どちらかを立てればどちらかが崩れる「対立するもの」として捉えられがちです。
しかし、私たちはその二つを対立するものとは考えていません。むしろ、
「その人がどう生きたいかを最優先し、その自由を支えることこそが、本当の意味でのリスク管理である」
そう考えています。今回は、株式会社ADACHI福祉サポートが大切にしている「意思尊重」と「リスク管理」の考え方についてお伝えします。
1. 利用者の意思を最優先するということ
私たちは、施設側の都合や一律のルールで、利用者の生活を縛ることを良しとしません。
一人ひとりの「大人としての生き方」を大切にする
私たちの利用者様は、20代から60代までと幅広く、それぞれに歩んできた背景や、これから叶えたい希望を持っています。
「新しいことに挑戦したい」という若者の情熱も、「自分らしい落ち着いた生活を守りたい」という方の願いも、同じように大切にします。施設のルールに人を合わせるのではなく、その人の年齢や価値観、ライフスタイルに合わせて支援を考えることを基本としています。
「当たり前の自由」を、当たり前に
「好きなものを食べたい」「行きたい場所へ出かけたい」といった、誰もが持っている自然な願いを、障害があるからという理由で制限したくはありません。私たちは、利用者様を「管理される対象」としてではなく、人生を自ら選び取っていく「一人の主体」として向き合います。
「できない」と決めつけない
「危ないから」「難しいから」と、最初から可能性を閉ざすことはしません。道具を使って何かを作ること、一人で買い物に行くこと。そこには確かにリスクもありますが、同時に本人の自信や、社会とつながる力になります。私たちは、過剰な先回りで可能性を摘み取らない姿勢を大切にしています。
2. 私たちが考える「攻め」のリスク管理
一般的に福祉の現場では、「事故をゼロにすること=リスク管理」と考えられがちです。しかし、私たちはそこに疑問を持っています。
過剰な管理が招く「本当のリスク」
転ばないように、失敗しないようにと行動を制限し続けると、人は次第に「どうせ無理だ」と諦めてしまいます。意欲が低下し、心身の活力が失われてしまうことこそが、長い人生において最大のリスクではないでしょうか。
自由を支えるための「合意形成」
私たちは、自由に伴うリスクを隠しません。ご本人、ご家族、そして地域の方々と**「どんなリスクがあるか」「その時どう対応するか」を事前に話し合い、納得感(プロセス)を共有すること**を大切にしています。
この「責任を共に分かち合う関係性」があるからこそ、施設は過剰な縛りから解放され、利用者は自分らしく挑戦できる。これこそが、私たちが目指す健全なリスク管理の姿です。
3. 現場での具体的な判断
意思尊重と安全がぶつかる場面では、次のような判断をしています。
• あえて「止めない」支援
強い衝動や思いを無理に力で制止することは、パニックや大きな怪我を招く場合があります。私たちはあえて追いかけすぎず見守り、地域や家族と連携することで、結果的に致命的な事故を防いでいます。
• 「やってあげる」から一歩引く
良かれと思ってすべてを介助することは、本人が本来持っている力を奪うことでもあります。あえて手を出さず、じっと待つこと。それも、本人の自尊心と自律を支えるための大切な技術です。
4. 私たちが目指している未来
私たちが考える「意思尊重」と「リスク管理」のバランスとは、リスクをゼロにするために自由を奪うのではなく、自由に伴うリスクを、地域や家族と共に受け止めながら、本人が本人らしく生きられる環境をつくり続けることです。
利用者を「守られるだけの存在」としてではなく、地域で共に暮らす一人の人間として尊重する。その姿勢こそが、私たちの支援の原点です。
株式会社ADACHI福祉サポート
※本記事は、実際の面接や現場での実践をもとに構成しています。事業所やサービス形態によっては、法令や安全基準に基づき個別の対応を行う場合があります。

